妊娠初期の食事ガイド|避けたい食品・推奨される栄養素

妊娠初期の食事ガイド|避けたい食品・推奨される栄養素

監修: 高野恭平 病院長 / 森下重雄 副院長(操レディスホスピタル)
最終更新: 2026年5月


妊娠が判明すると、食事について「何を食べてもいいの?」「これを食べたら赤ちゃんに悪くない?」という不安が一気に押し寄せることがあります。同時につわりで食べられない時期でもあり、「食事のバランスを整えなければ」というプレッシャーも重なりがちです。

操レディスホスピタルでは、妊娠初期の食事は「完璧を目指すより、避けるべきものを押さえ、食べられるものをしっかり食べる」ことが基本と考えています。この記事では、産婦人科医の視点から妊娠初期の食事で知っておくべき情報をわかりやすくまとめました。


目次

  1. 妊娠初期の食事の基本的な考え方
  2. 妊娠初期に避けるべき食品リスト
  3. 特に注意が必要な栄養素(ビタミンA・水銀)
  4. 積極的に摂りたい栄養素
  5. つわりがひどいときの食事のコツ
  6. 食事以外で気をつけること(食品安全)
  7. よくある質問(FAQ)
  8. 操レディスホスピタルへの受診案内

1. 妊娠初期の食事の基本的な考え方

妊娠初期(〜妊娠15週ごろ)は、赤ちゃんの主要な臓器・神経系が形成される大切な時期です。しかし「完璧な食事」を強いるプレッシャーは逆効果です。

厚生労働省「妊産婦のための食生活指針(令和3年改訂版)」では、妊婦に必要なことを以下のように示しています。

  • 食事のバランスを意識する(主食・主菜・副菜・乳製品・果物)
  • 葉酸・鉄・カルシウムを意識的に摂る
  • 避けるべき食品・行動を知る
  • 体重増加の目標を知り、無理なダイエットをしない

「何を食べてはいけないか」を守りながら、バランスよく食べることが基本です。


2. 妊娠初期に避けるべき食品リスト

2-1. 生肉・加工肉(トキソプラズマ・リステリア菌のリスク)

食品 リスク 代替方法
生ハム・サラミ リステリア菌感染のリスク 加熱済みのハムを使用
ユッケ・レバ刺し トキソプラズマ・細菌汚染 十分加熱して食べる
パテ(レバーペースト) リステリア菌・ビタミンA過剰のリスク 缶詰は比較的安全

2-2. 生魚・貝類(水銀・細菌汚染のリスク)

生魚全般を禁止する必要はありませんが、以下の魚は水銀含有量が高いため摂取量を控えることが推奨されています(厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項(改訂版)」)。

魚種 摂取目安(1回60〜80gで計算)
マグロ(クロマグロ・メバチ) 週1回まで
メカジキ 週1回まで
キンメダイ 週1回まで
ツナ缶(ビンナガ) 週に1〜2缶まで(缶詰は比較的少ない)
サーモン・タイ・アジ・イワシ等 通常量であれば問題なし

なお、寿司・刺身については全面禁止ではありませんが、細菌汚染リスクもあるため、鮮度管理が確かな場所で適量を食べることを心がけてください。

2-3. ナチュラルチーズ(リステリア菌のリスク)

加熱殺菌が不十分なナチュラルチーズはリステリア菌感染のリスクがあります。

  • 避けるべき: ブリー・カマンベール・ゴルゴンゾーラ等の非加熱ナチュラルチーズ
  • 食べてよい: プロセスチーズ、カッテージチーズ(加熱処理済み)、加熱して使う料理

2-4. アルコール

妊娠中のアルコール摂取は「胎児性アルコール症候群」のリスクがあります。安全な摂取量は確立されておらず、妊娠中は飲酒ゼロが推奨されます(日本産科婦人科学会)。

2-5. カフェイン(過剰摂取に注意)

カフェインの過剰摂取は胎児の発育に影響する可能性があります。厚生労働省は1日200mgを超えないよう目安を示しています(コーヒー約2杯分)。

飲料 カフェイン含有量(目安)
コーヒー 約60mg/100mL
紅茶 約30mg/100mL
緑茶 約30mg/100mL
エナジードリンク 製品による(高い場合あり)

ハーブティーの一部(サフラン・カモミール大量摂取等)も妊娠中は注意が必要です。不明な場合は産婦人科医にご相談ください。


3. 特に注意が必要な栄養素(ビタミンA・水銀)

ビタミンAの過剰摂取

ビタミンAには動物性食品に含まれるレチノール(過剰摂取で胎児奇形のリスク)と、植物性食品に含まれるβ-カロテン(安全とされる)の2種類があります。

  • 注意すべき食品: レバー(牛・豚・鶏)。特に鶏レバーはビタミンA含有量が非常に高い
  • 週1〜2回以下が目安: ビタミンAを多く含む食品は少量にとどめる
  • サプリメント: 単独のビタミンAサプリはできれば避ける。市販の妊婦用マルチビタミンはβ-カロテン配合が多いため比較的安全

野菜・果物に含まれるβ-カロテンは必要に応じてビタミンAに変換される仕組みがあるため、過剰摂取になりにくく問題ありません。


4. 積極的に摂りたい栄養素

4-1. 葉酸(フォリックアシッド)

推奨量: 妊娠初期 480μg/日(食事280μg+サプリ200μg)

葉酸は神経管閉鎖障害(二分脊椎症など)の予防に不可欠な栄養素です。妊娠前1ヶ月から妊娠3ヶ月まで、サプリメントでの追加摂取が推奨されています(厚生労働省)。

食品 葉酸含有量(100gあたり)
枝豆 260μg
ほうれん草 210μg
アスパラガス 190μg
ブロッコリー 120μg
納豆 120μg

食事だけで必要量を補うのは難しいため、市販の妊婦用サプリメント(葉酸400μg含有)の活用をお勧めします。

4-2. 鉄

推奨量: 妊娠初期 9mg/日(非妊娠時比+2.5mg)

鉄は赤血球の材料となるミネラルで、胎児への酸素供給に重要です。妊娠中は鉄の需要が高まり、貧血になりやすくなります。

食品 鉄含有量(100gあたり)
豚レバー 13mg(ビタミンAに注意し少量)
牡蠣 3.8mg(加熱して食べる)
小松菜 2.8mg
ひじき(乾燥) 6.2mg
木綿豆腐 1.5mg

非ヘム鉄(植物性)はビタミンCと一緒に摂取すると吸収が高まります。妊婦健診で貧血が指摘された場合は鉄剤が処方されることがあります。

4-3. カルシウム

推奨量: 妊娠中 650mg/日

カルシウムは赤ちゃんの骨・歯の形成に必要です。摂取が不足すると、母体の骨からカルシウムが使われます。

食品 カルシウム含有量(100gあたり)
牛乳 110mg
ヨーグルト 120mg
プロセスチーズ 630mg
小松菜 170mg
豆腐(木綿) 93mg

4-4. タンパク質

妊娠初期は1日あたり+0〜5g程度の追加が目安。魚・肉(加熱)・卵・豆製品・乳製品からバランスよく摂りましょう。


5. つわりがひどいときの食事のコツ

妊娠5〜8週ごろからつわりが始まる方が多く、食事が難しい時期があります。

食べられるものを少量ずつ

  • 無理にバランスを整えようとしない
  • 冷たいもの・さっぱりしたもの(ゼリー・梅干し・クラッカー等)を少量ずつ
  • 空腹になると吐き気が増す場合は、少量を頻繁に摂る

水分補給を優先

吐き気が強い時期は水分補給を最優先にしてください。経口補水液・スポーツドリンク(薄めたもの)・薄い麦茶などが飲みやすいことが多いです。

いつもの葉酸サプリが飲めないときは

つわりで葉酸サプリが飲みにくい場合は、チュアブルタイプや粉末タイプに変えるか、食事から積極的に葉酸を摂るようにしましょう。

受診目安

以下の場合は産婦人科を受診してください。

  • 24時間以上何も食べられず・飲めない
  • 体重が急激に減少(1週間で2kg以上)
  • 脱水症状(口が渇く・尿が少ない・目がかすむ)

これらは妊娠悪阻(重症つわり)の可能性があり、点滴治療が必要な場合があります。


6. 食事以外で気をつけること(食品安全)

食中毒予防

妊娠中は免疫機能が変化し、食中毒のリスクが高まる場合があります。

  • 生肉・生魚は十分加熱する
  • 作り置きは早めに食べる(常温保存を避ける)
  • 手洗いを徹底する

農薬・食品添加物

通常の日本の食品であれば、農薬・添加物による健康影響を特別に心配する必要はありません。バランスのよい食事を心がけることが最も重要です。


7. よくある質問(FAQ)

Q1. 妊娠初期に寿司を食べてしまいました。赤ちゃんに影響はありますか?

寿司を少量食べた程度で過度に心配する必要はありません。今後は水銀量の多い魚種(マグロ・キンメダイ等)の食べ過ぎと、生牡蠣・生ハムなどの食中毒リスクのある食品に注意してください。

Q2. コーヒーは完全にやめなければいけませんか?

1日200mg(コーヒー約2杯相当)以内であれば、現在のガイドラインでは問題ないとされています。ただし、不安な場合はカフェインレスコーヒーやノンカフェイン飲料に切り替えるのも選択肢です。

Q3. 葉酸サプリはいつから始めればいいですか?

妊娠前(妊娠を希望している時期から)が理想的ですが、妊娠判明後でも遅くありません。妊娠3ヶ月(12週)まで継続することが推奨されています。

Q4. つわりで何も食べられません。赤ちゃんは大丈夫ですか?

つわりで食事ができなくても、妊娠初期の赤ちゃんはまだとても小さく、母体の栄養を大量に必要とする時期ではありません。水分補給を優先し、食べられるものを少量でも口にしてください。1週間以上全く食べられない・飲めない場合は受診を。

Q5. 鉄分の多い食品としてレバーを勧められますが、ビタミンAが心配です。

鶏レバーは特にビタミンA含有量が非常に高いため、妊娠中は週1回以下、少量(30〜50g程度)にとどめることをお勧めします。鉄分の補給は小松菜・ひじき・豆腐など他の食品でも可能です。

Q6. 体重管理はどう考えればいいですか?

妊娠初期の体重増加目標はBMIにより異なります(厚生労働省ガイドライン)。一般的にBMI 18.5〜25の方では妊娠全期間で7〜12kgの増加が目安です。初期(〜13週)は0〜2kg程度の増加が目安ですが、つわりで体重が減ることも珍しくありません。


操レディスホスピタルへの受診案内

操レディスホスピタル
住所: 岐阜市鹿島町3丁目56番地
電話: 058-233-8811
診療科: 産科・婦人科・不妊治療

食事や栄養についての不安は妊婦健診の際にお気軽にご相談ください。管理栄養士への相談をご希望の方はスタッフにお申し付けください。


関連記事(内部リンク)


参考文献・出典

  • 厚生労働省「妊産婦のための食生活指針(令和3年改訂版)」2021年
  • 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項(改訂版)」2023年
  • 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン産科編 2023」
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

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