インキュベーターとは、胚のお部屋のことです。子宮の中を再現した環境になっています。
外の世界と酸素や二酸化炭素の状態が異なります。胚はこのお部屋で約1週間過ごします。
通常のインキュベーターでは、胚の様子を見るために外に取り出して顕微鏡にセットし、観察します。この時インキュベーターの環境と違う場所に連れ出されるため胚へのストレスがある、また、様子を見れるのは１日１回程度です。

タイムラプスインキュベーターはインキュベーターの中に顕微鏡を内蔵しています。自動的に１５分に１回胚の様子を見てくれるので、観察のタイミングが多い、外に出さなくてもよいためストレスも少ないです。

・タイムラプスインキュベーターを３台導入している施設はそこまで多くありません。

・全ての人にタイムラプスインキュベーターでの培養が可能です。

当院では培養室へ入るためにはエアシャワーを浴びて入室します。
また後述しますが、顕微授精ができる顕微鏡が２台導入されており、２台ともIMSI、紡錘体観察が可能です。
また作業は清潔な状態で行うためクリーンベンチで行います。クリーンベンチが３台あるため、効率よく作業することができます。

当院の顕微授精の特徴の紹介をします。
クリニックごとで大きな差が出てくるのが顕微授精だと思います。使用している顕微鏡ややり方が千差万別です。当院で行っているのはコンベンショナルイクシーといい一般的な顕微授精です。

当院では成茂製作所のTAKANOMEを使用しております。顕微授精がよりスムーズに可能で、さらに卵子への負担が少ないです。

紡錘体とは？
細胞が分裂するときに必要なものです。通常は第一極体の真下にありますが、場所がずれている卵子もあります。通常の光では紡錘体を観察することはできません。特殊なdishと偏光を用いることで観察が可能です。

顕微授精をする時に紡錘体を傷つけないようにするために、全例で紡錘体を観察しています。

IMSIとは？

形態良好精子を選択して顕微授精する方法です。
言い換えると精子を拡大して観察し選択することです。実は、どんな精子が良いのか？といった基準はまだ判明しておりません。より頭部の傷が少ない精子を選別することがよいのではと言われています。当院では顕微授精をする全例に対して1200倍に精子を拡大（※画像）して選んでいます。

PICSIとは？

どんな精子を顕微授精で卵子へ注入するのか…先述の通り、頭部に傷が少ないものを選ぶという形態的な選別の他にも実は選別方法があります。
それが、PICSIと呼ばれる方法で、簡潔に言うとヒアルロン酸にくっつく精子を選択する方法です。
精子が成熟すると頭部がヒアルロン酸にくっつくようになります。ヒアルロン酸がたくさん入った培養液に精子を泳がせるとヒアルロン酸が精子の頭にくっついて動きが止まります。このような成熟した精子を選んで顕微授精をします。成熟した精子のほうが流産率が低いのでは？と考えられています。

胚にとってインキュベーターの外の環境はストレスです。胚移植の時にもインキュベーターの外にいる時間を短くするため、クリーンベンチ内にインキュベーターを設置しました。移動距離が短いため、胚へのストレスを最小限にしています

バーコード認証

人間はヒューマンエラーを起こすものです。ダブルチェックをしたとしてもヒューマンエラーを無くすことは不可能です。
不妊治療ではヒューマンエラーによって他人の胚を移植された、他人の精子で受精させてしまった等の重要なヒューマンエラーが考えられます。
それを防ぐために、人間によるダブルチェックの他にバーコードによる認証を行っています。

凍結する胚１つ１つにバーコードを付けて凍結しています。胚を移植するときに間違いを防ぎます。

採卵する時にも認証します。このバーコードのデータとこれから卵子を入れるdish（容器）のバーコードを照らし合わせて間違いがないようにします。凍結する胚１つ１つにバーコードを付けて凍結しています。胚を移植するときに間違いを防ぎます。

移植の際にも胚を凍結する時についていたバーコードと胚を入れる容器のバーコード、患者さんのバーコードを認証して必ずその人の胚を移植できるようにしています。

採卵、胚移植をするためのお部屋になります。
入室する際には必ずバーコードによる認証をしてから入室します。採卵時には静脈麻酔が可能です。

院内にはプライバシーの保たれた専用の採精室がございます。採精時には滅菌された専用カップをお渡しいたします。

採卵が始まるまでの時間を過ごす、採卵が終わった後に休むための部屋です。
採卵…緊張します。採卵が始まるまでの数時間、頑張って行った採卵後にゆっくり休んでもらうために個室を４部屋用意しています。採卵件数が多い場合は大部屋になります。
今後もっとリラックスして過ごしてもらえるようにしていきたいと考えています。