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不妊症でお悩み│妊娠を望まれるすべての方々へ

このコラムでは、妊娠を望まれるすべての方々に対して、主に不妊症に関する基本的な事柄について説明していきます。

不妊とは?

 

不妊とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものをいいます。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義しています。
しかし、女性に排卵がなかったり、子宮内膜症を合併していると妊娠しにくいことが分かっています。さらに、男女とも加齢により妊娠が起こりにくくなることが知られており、一定期間を待たないですぐに治療した方が効果的である場合もあります。



不妊症の検査・治療の経験がある人は4組に1人

 

ではどれくらいの人が不妊症で悩んでいるのでしょうか? 実は2021年に行われた調査では、およそ4組に1組が現在または過去に不妊の検査や治療の経験があると言われています(国立社会保障・人口問題研究所 第16回出生動向基本調査)。また2021年に日本で生まれた 11.6人に1人は、生殖補助医療(体外受精)により誕生した子供と言われており、不妊症、そして不妊治療は決して珍しいことではありません。(日本産科婦人科学会 2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績)

 

不妊の原因は?

 

過去にWHOが行った調査によれば、不妊の原因のうち41%が女性に要因があり、男性要因は24%、そして男性および女性どちらにも原因がみられたものは24%でした。このことから、不妊の原因のおよそ半数近くに男性要因が関わっているということが言えます。不妊症の原因は多岐に及び、原因によって必要な検査、そして治療方針は異なります。


 

不妊症の原因(WHO調査)



 

どんな人が不妊になりやすいのでしょうか?(女性編)


 

ここでは不妊症になりやすい女性の特徴を挙げていきます。

 

(1)月経の異常がある女性


 

①月経周期の異常:月経の間隔が長い(39日以上あく)方、逆に極端に短い(24日以内に来る)方は排卵をしていないことが多くあります。
②月経量・期間の異常:月経の量が極端に多い、あるいは長い(8日以上)方は子宮筋腫などで子宮の内腔(受精卵が着床するところ)の形が変形していることがあります。逆に月経の量が極端に少ない、あるいは短い(2日以内)方は、月経があっても排卵していないこと、過去に人工妊娠中絶や流産の処置を受けたことがある方は子宮の内腔の一部が癒着していることがあります。
③月経にともなう症状の異常:月経の際の痛みが若いころに比べてどんどん強くなる、月経時に下痢をいつも起こす、あるいは性行為の時に以前になかった痛みが出て来た方などは子宮内膜症の症状の可能性があります。

 

(2)性感染症・骨盤腹膜炎


 

クラミジアや淋菌といった性行為感染症にかかったことがある方、以前に骨盤腹膜炎を起こしたことのある方は主に卵管が原因の不妊症のリスクを上昇させます。

例えば、妊娠高血圧症候群や切迫早産などお母さんへの負担が増える可能性や、赤ちゃんが早く生まれる(早産)確率が増加することがわかっており、それによって生まれた後の新生児の健康問題が起きる可能性も高くなります。

 

このように多胎妊娠には特別な管理が必要となることから、多くの場合は高次医療機関にてお母さんと赤ちゃん両方の安全を最優先した妊娠・分娩管理を行うことになります。

 

(3)以前に子宮筋腫・子宮内膜症を指摘されている場合


 

以前、健康診断などで子宮筋腫、子宮内膜症と言われている場合、早めの受診をお勧めします。とくに、子宮内膜症の患者さんの約半数は不妊症を合併し、不妊症患者の約25~50%に子宮内膜症が診断されるといわれています。

 

(4)35歳以上の女性

 

女性の妊娠率の減少は30歳から徐々に始まり、35歳を過ぎると加速し、40歳を過ぎると急速に減少します。これは、加齢による卵の質の低下によるものです。

 

どんな人が不妊になりやすいのでしょうか?(男性編)


 

ここでは不妊症になりやすい男性の特徴を挙げていきます。

 

不妊になりやすい男性の特徴

 

・睾丸が小さい方、睾丸の上に複数の血管のコブ(精索静脈瘤)がある方
・小児期の病気(鼡径ヘルニアの手術歴、停留精巣の既往、おたふくかぜの既往)
・抗癌剤治療や放射線治療を受けたことのある方
・動脈硬化、糖尿病をお持ちの方、生活習慣(肥満、喫煙、睡眠不足など)

 

男性も女性も一緒に検査を始めることがとても重要です。

 

不妊症は女性だけが気をつければいいのか?と言うのは誤りで、不妊症の原因のおよそ半分は男性にあります。また原因によっては自覚症状がない場合もあるため、特に自覚症状がなくても「不妊症かな?」と思ったら早めに産婦人科医に相談されることが大切です。その際は男性も女性も一緒に検査・治療を始められることをお勧めします。

 

最後に


 

「私って不妊なの?」という心配を抱く女性の方は少なくありません。当院ではご夫婦の希望に応じて、不妊期間が短くても検査・治療を行うことが可能です。不安なことがあれば、お気軽に当院へご相談いただければと思います。



 

今回の記事の監修・執筆者

監修・執筆者

生殖医療統括部長
松原 寛和先生

医学博士
日本産科婦人科学会専門医・指導医
日本生殖医学会 生殖医療専門医
母体保護法指定医